『ランペイジ』 1巻  514円+税 (著者:吉永裕介 出版:講談社)

舞台は西暦184年、黄巾賊が暴れまわっている時代。
若者・張飛は、旅の途中、黄巾賊に滅ぼされた村で食料を漁っていたところ、関羽が率いる
義勇軍の一群れと偶然、出会います。
関羽に、大した才もなさそうと評された張飛は、負けん気もあって、その場で義勇軍に参加。
張飛の回想によると、彼は幼い頃に故郷(町か村?)を謎の人物に襲われ、周囲の人々を
殺されたあげく、友人だか幼馴染だかの少女を連れ去られたらしく、旅をしていたのも
義勇軍への参加も、彼女を探しだして助けるための行動であるようです。

やってやる、と意気ごむ張飛でしたが、間も無くむかえた黄巾賊との戦いでは、おびえて何も
出来ずじまい。関羽の活躍で、義勇軍(大将は劉備、関羽は副将)自体は勝利したものの、
自分が情け無くなった張飛は軍を離れ、山奥で木に怒りをぶつけて、八つ当たり。
そこでたまたま、黄巾賊が人を襲っているのを目撃します。

黄巾賊は襲った親子の父親を殺し幼い娘もまさに射殺されそうな中、張飛が割って入り
娘・英鈴を逃がしますが、代わりに彼は黄巾賊の矢に喉を射ぬかれ、崖から転落してしまいます。

死にかけながら、何とか途中でひっかかった洞穴に這い込むと、そこでは二人の神仙…死を司る
北斗と、生を司る南斗が碁を打っていました。老いた南斗に、張飛の命を救う力はなかったが、
彼は若き北斗に話を持ちかける。もし自分が碁の対局に勝てば、北斗が南斗の役(生を司ること?)
を演じてみるのはどうかと。面白い…と不適な笑みを浮かべる、北斗。

ふと張飛が目を覚ますと、射られたはずの喉に傷もなく、血の跡もありません。
変な夢を見た…と起きてみると、何と彼の左胸には矛が深々と突き刺さっていました。
慌てて矛を引き抜くも、血も出ず痛みも無い。怪しみながらも謎の矛・蛇矛(だぼう)を携え、
戻ってみると、劉備軍が守備していたはずの太守の城が黄巾賊に攻められている真っ最中。
しかも劉備・関羽らは敵の策にはまり、城外遠く出陣中…張飛は成り行きで、城を守るために
戦いますが、その最中、人の死を目の当たりにしたことで恐怖心にとらわれ、その隙をつかれて
蛇矛に宿る魂に、身体をのっとられてしまいます。
張飛の身体も精神も、のっとった"魂"は超人的な力で賊を殺戮、黄巾隊の大将・トウ茂まで討ち、
張飛はいちやく城を救済した豪傑となりますが、その夜、"魂"は劉備の命をも取ろうとし…。

歴史の流れや人物は三国志を使い、そこに神仙等のオリジナル要素が絡んで話が展開する
作品のようです。この一巻では、神仙がどんな存在で何を目的に動いているのか、多くは語られて
おらず、まだまだ謎に包まれています。

蛇矛は、張角を敵と見なして黄巾賊も蹴散らしましたし、さらにその張角と同門だという劉備をも
殺そうとしたので、彼らとは敵対する立場にあるようです。また蛇矛が「神仙戦争を勝ち抜くのは
我だ!」と口走ってましたので、どうやら神仙同士の争いごとが持ち上がっている模様。

劉備はといえば、張角とともに南華老仙のもとで修行し、紅真珠という宝玉を使って"絶対魅了"と
いう不思議な術を使えるという、神仙と関わり深いと思しき謎多い人物であり、
しかも女性です!まだ二十代前半か、十代かもしれない若くて可愛い女の子。

蛇矛によれば、紅真珠を使いこなせる劉備は「南華老仙に恩顧を受けた死すべき者」だそうで。
劉備も、自分は"生身の人間"で、蛇矛のように"肉の中まで力を共生している訳ではない"と
意味ありげな事を語っていたりして…彼女もまた、蛇矛のような、何か不可思議な存在である
ようです。どうやら彼女がこの作品のヒロインらしく、何故かヌードで描かれる事が多いです。
少年漫画(青年漫画かも?)なので、読者サービスで…なのでしょうか。


劉備は謎の術"絶対魅了"で蛇矛の魂を追い払い、張飛の意識が戻ります。
しかし蛇矛の魂と張飛の肉体とは、完全に一心同体になってしまっていて、引き離す事も出来ず、
矛が折れれば張飛も死ぬ運命。どうすりゃいい…と惑う張飛に、劉備は、蛇矛の魂を引き出さない
ようにする方法を告げます。それは張飛が死を恐れぬよう強くなる事。

"魂"は、張飛の"死への恐怖"がきっかけとなって現れる。張飛が死を恐れなければ、
"魂"も表に現れる事は出来ないので、あえて戦いに身を投じ、死をも恐れぬ経験を積めば良い。
そのために、私と共に戦え、と劉備は張飛を誘います。彼女は、張飛の真っ直ぐな人柄をも見込み、
共に国のため戦えと、張飛に勧めるのでした。
こうして覚悟を決めた張飛は、戦いへと足を踏み入れて行きます…。


神仙をめぐる謎に興味を惹かれ、張飛の、びびりながらも結局は前に進もうとし、
悪い方に向かいはしない真っ直ぐな姿も好感が持てました。彼は決して強くはなく、人間的に弱い
面もあり行儀も良くない(ヌッ殺す!とか、クソ女、とか言う)若者だけど、その完璧でない人間像に
も親しみが持てます。

やはり一巻目なので、内容的にはまだ序盤の序という感じであり、今後の伏線であろう謎が次々と
出てきて、それを頭に入れるのには一苦労。しかも謎はどれも殆ど解明されないので、読了しても
すっきりとしません。

何故、死ぬはずであった張飛が助かったのか、蛇矛や劉備の正体は?神仙戦争とは何なのか、
少女・英鈴は何者なのか…これらの謎が次第に解かれ、話の進む方向が見えてくるだろう2巻目
以降で、面白くなりそうな予感がします。

ちなみに張飛、劉備の他にも、三国志でおなじみの人物達が何人か登場していました。
関羽は、劉備が女性と知りながら、常に彼女を兄者と呼び、彼女を兄として、また主君として
敬っている真面目でクールな青年でした。まだ若いからか、長いヒゲは蓄えておらず、顎ヒゲが少し
伸びている程度。まだ美髯公ではありません。

顔見せっぽく、曹操と夏侯惇も出てきました。曹操は、自分が護衛している御殿の屋根で、
気持ちよさそうに昼寝するような明朗快活っぽい若者。一見、穏やかでほのぼのとした性格っぽい
ですが、内面に研ぎ澄まされた厳しさを持っていそう。二面性がありそうな雰囲気であります。
夏侯惇は、モヒカンっぽい、ごついおっさんでした。ザコ敵っぽい外見なのが、ちょっとショック…。

劉備の友人・簡雍も出てきます。太めなオネエキャラです!関羽や張飛を気に入ってそう?
劉備が女性なことも知っているようです。

趙雲も、一巻のラスト辺りで早々と出て来ました。張宝に、幽州随一の狂剣士と称されるほど
剣の腕が立つ美形の青年。何らかの事情で、心ならずも黄巾賊の命令に従っている模様で
黄巾を快くは思っていないらしく、思い切り悪態をついたりと、鋭く冷徹な性格でありそう。劉備の
命を狙い、襲撃してきます。

余談ですが、この趙雲、女性に見えないこともありません。
作者のあとがきで、趙雲は「美男子」だとしっかり書かれていましたが、劉備も、そして左慈も
女性として出てくるそうなので、女性化される人物は多そうですし趙雲にも油断できないかも?

 

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