・『凌統物語 昨日の敵は今日も敵』定価:2350円 (著者:満珠 菓子子 出版:技術評論社) …『三国志W 非公式ガイドブック』という本に、付録として収録されている漫画です。
「凌統物語」…まるで三国志とは何か違う、別のお話が繰り広げられそうなタイトルですね(^^;)
タイトルからも分かる通り、凌統が主人公で、甘寧との確執から和解までが描かれた漫画です。
建安八年(203)江夏での呉軍対黄祖軍との戦において、父・凌操を敵将・甘寧に射殺された呉の
凌統は、必ず甘寧を殺し父の仇を討つと心に誓う。甘寧が呉に投降してからも、凌統は度々甘寧に
喰って掛かり、主君の孫権や呂蒙が注意しても耳を貸そうとしない。しかし甘寧の行動も、乱世に
おいては仕方が無かったことだと分かり始めて…。っと、こんな感じでストーリーが進み、最終的には
例の仲直りの場面に繋がるわけです。
16ページと短い中にも、有名なエピソードはしっかりと取り入れられていて、凌統が剣舞で甘寧の
命を狙う場面も出てきました。もっとも凌統がいきなり甘寧に斬り付け、そのままチャンバラに突入
しているので、二人とも全然舞っていないのですけれど^^;
内容もしっかりしているので、呉ファンにはなかなか嬉しいお話なのではないかと思います。
少女漫画風の絵柄は綺麗で、登場人物は皆、若い・ヒゲ無し・美形に描かれています(笑)
(といっても登場人物は凌統・甘寧・呂蒙・孫権の四人だけですが)
一応、凌統と甘寧が仲直りするまで「六年の歳月が経った」と作中に明記されていますが
誰一人としてこれっぽっちも老けていないので、そんなに歳月が経ったとは思えませんでした。
まあ短いお話ですから、そこまで凝る必要も無いのでしょう。
凌統くんは、とにかく健気です!呉に投降してきた甘寧に斬りかかり、静まれと命じられても
「殿!!なんでこいつをかばうんですか」「殿は父上よりこの男が大事なのですか!!」
と主君に向かって堂々と言い返したり、「あいつがいなかったら父上はまだ俺の隣にいたッ!」と
涙ながらに叫んだり…。父を思う気持ちの強さが伝わってきて、こちらまで切なくなってしまいました。
父を思うがゆえに甘寧を決して許そうとしない、真っ直ぐで一途な少年に描かれています。
一方、甘寧はそんな凌統のことを、余裕であしらっているように見えます。
「兵三千もあれば…」と先陣を名乗り出る凌統の横から「それがしなら百騎で十分です」と口を出す
など、凌統がカチンとくることを平気でしたりしていますから。ですが決して凌統を嫌っているのでは
ないそうです。「こう見えてもオレはあのガキのこと、結構気に入ってるんだぜ」なんて言ったり、
寧ろ凌統の態度を面白がっているようでした。気に入ってるなら、一々怒らせるような事を言わなきゃ
良いのにとも思うんですけれどね(^^A゙それはともかく、「なんでいつもお前にかなわないんだよッ!」
と泣いてつっかかる凌統にも「当然だ、オレはお前の親父より強い男なんだから」とさらっと言って
のけるクールさも持ち合わせていて、随分と大人なイメージです。
凌統と甘寧の対立…というより、一方的に喰ってかかる凌統を心配する、孫権と呂蒙の姿も
描かれていました。二人とも顔見せ程度に少ししか出てきませんが、呂蒙さんはなかなか印象的です。
何故なら、美形だから(笑)あっ、一応、孫権も美形ですよ♪
呂蒙さんは美形な上に、凌統を穏やかに諭すやさしいお兄さん風に描かれているなど、なかなか
良い役回りです。そのような呂蒙さんが見られるという点でも貴重な作品かもしれませんvv
|