『江のざわめく刻』(集英社 著者:朝香 祥)

    〈注意〉…長い上に、結構きついことを言っています。お気を悪くされるかもしれませんので、
           読まれる時は、何卒ご注意下さい。


管理人「今回は、かぜ江シリーズの2作目『江のざわめく刻』(通称:ざわ江)に出てくる孫権さんを取り上げます。

     この作品では、曹操に降伏するか開戦するかを、呉の陣営が決めなければならないというところから

     孫権さんが開戦を決意するという有名な場面までが書かれています。ですから、この本に出てくる

     孫権さんは27歳ですね」

孫権 「かぜ江シリーズでは、以前『青嵐の夢』に出てくる3歳の俺を取り上げたことがあったな。あの3歳の俺が

    どう成長したか楽しみだ」

管理人「では、まず容姿から。『青嵐の夢』で取り上げた時には、孫権さんの髪の色は不明でしたが、

     この本にハッキリと赤い髪をしていると書かれていました。孫権さんの容姿については

     『癖のある赤っぽい色の髪と、大きめの、青みの強い瞳』と書かれていますから」

孫権 「俺に劉備との同盟を結ぶように勧めるため、使者として来た孔明は、この本の俺を見て

     『感情の起伏が激しいような印象をうけた』みたいだな」

管理人「さらに詳しく、

     『顔立ちじたいは少々おとなしげで、整ってはいるが孫策のように人を惹きつけずには

      おかないといった風はない。けれど、太い眉と我の強そうな唇は確かに兄と同じ血を

      感じさせるし、体格はむしろ孫権の方がよかった』と描写されていますね」

孫権 「例え、兄上のように人を惹きつけはしなくても、整っていると書かれているのは嬉しいな」

管理人「おとなしげ…というところが引っ掛かります。孫権さんって、おとなしかったですか?」

孫権 「俺がおとなしくないとでも言うのか?!」

管理人「(そういうところが、おとなしくないのですよ…^^;)」

孫権 「太い眉と我の強そうな唇、体格が良い…か。それで整っているのだから、容姿的にはなかなか良いな」

管理人「挿絵のイラストの孫権さんも、美形に描かれていますよ。顎が細くて鼻筋もとおっていて、珍しいくらい

     美形に描かれている孫権さんです」

孫権 「そうか。『青嵐の夢』ではあんなに小さかった俺も、立派に成長したようだな!」

管理人「容姿は良いです。ですが、問題は性格なのですよ…」

孫権 「何、性格が悪いのか?」

管理人「いえ、悪いというか…。まず、この本で孫権さんは、曹操さんに対してどのような態度を取るかを

     決めるために、柴桑で軍議を開くことにしました。そして孫権さんは、周瑜さんにハ陽へ視察へ

     行くように命じるのです」

孫権 「ハ陽は呂範が治めているが、ハ陽では賊徒の反乱が起こっており、呂範は動けないのだ。

     そこで公瑾が行って、曹操と戦うことになった時に、ハ陽でどれだけの動員が可能でどれだけの準備が

     整うかを掴んでおいてもらおう…ということなのだな。そして、軍議の決定を待って、必要とあらばハ陽の

     水軍を率いて来られるように準備しておいてもらう、という目的もあるらしいが…。

     大事な軍議を前に公瑾を、軍議を開く柴桑に置いておかないでハ陽に行かせるのか?

     これでは、公瑾は軍議に出られないのではないのか?」

管理人「そうなんですよ…。実は公瑾さんがハ陽に派遣されることになったのは、

    『主戦の可能性を少しでも減らすために、開戦を唱えそうな公瑾さんは軍議に出られないようにする』

     という、降伏派の人々の黒い意図が働いて決定されたことだったのです!」

孫権 「降伏派の奴らの差し金か…。公瑾を柴桑から追い出すためのハ陽派遣ということなのだな。

     汚いやり方だ!それで、ざわ江の俺は、公瑾をハ陽へ派遣することを許したのか?」

管理人「もちろんです。周瑜さんに、ハ陽へ行けと命令したのは、孫権さんなのですから」

孫権 「軍議に公瑾を出さないようにしようというのは、俺の意図でもあるのか?」

管理人「う〜ん…孫権さんが周瑜さんを追い出したのは、『降伏したいから、開戦派らしい周瑜さんに

     意見を言わせないようにする』ということではないようです。孫権さんは、お兄さんの孫策さんの

     ことを強く意識していて、孫策さんに強くコンプレックスを感じているようなのです。

     そして、周瑜さんの後ろにも孫策さんの影を見ていて、周瑜さんは自分ではなく、まだ孫策さんを

     主君として見ていると思いこまれているのです。孫権さんは自分と孫策さんを比べて、自分は

     兄にかなわないと思い悩まれ、周瑜さんにも主君として認められていないのではないかと悩み…」

孫権 「…公瑾の自分への忠誠をうたがって、ハ陽に行かせたというのか…。降伏派の、

     『公瑾を追い出そう』という意図を知りながら。全くとんでもない奴だな、ざわ江の俺は!

     兄上にコンプレックスを持っているのも情けなければ、認めてくれないと疑って、公瑾を大事な

     軍議から遠ざけようとするのも、一国の君主としてあるまじき行動だぞ!国の大事を前に、

     そんな理由で重臣を遠ざけるなど、公私混同もはなはだしいな!」

管理人「それに加えて、孔明さん曰く『中護軍どの(周瑜)の意見は孫討虜将軍(孫権)の意思よりも重いと、

     私は聞いております』 ・ 『だからこそ中護軍どのは軍議を前に柴桑からハ陽に派遣されたのだ

     という話も、耳にしました。孫討虜将軍がそれをおそれ、あなた(周瑜のこと)を遠ざけたのだと』

     という事情もあったようですね…」

孫権 「俺よりも周瑜の意見の方が重いと書かれているのか…。何だか、随分な書かれ方だな」

管理人「孫権さんは周瑜さんに、大事の時には意見を求めて、その言を採用したりしていますが、

     それは主君として当たり前なことをしているだけで、周瑜さんの意見の方が孫権さんの意図より

     重いというのとは違うように思えますが。周瑜さんの進言でも、孫権さんは取り上げなかったものも

     ありましたしね」

孫権 「たとえ、『俺より公瑾の意見の方が重んじられる』というのが真実ではなくても、この本の俺は

     そう思い込んで周瑜のことを遠ざけたのだろ?この本の俺が悪いことには変わりないな…」

管理人「ともかく、この本の孫権さんは、孫策さんへのコンプレックスの塊です!

     軍議を開く前日の孔明さんとの会見で、孔明さんに『もしここに先代…討逆将軍(孫策)がおられたら、

     なんとおっしゃるかと思いまして』と言われると、怒って机に拳を叩き付け、唇を噛み締め空を

     にらみすえます。これは孔明さんの「怒らせて開戦を決断させよう」という挑発作戦の一環で、

     この台詞の前にも色々と、孫権さんを怒らせるようなことを、孔明さんは言われていたのですけど。

     さらに孔明さんは『討逆将軍は、非常に攻撃的で素晴らしい戦上手であったとうかがっております。

     それに、決して他人に屈することをいさぎよしとしなかったとも。東呉の主人があの方であれば、

     とうにご自身の威信と誇りを懸け、曹操に全力で挑まれていたかも…』などと言い、

     コンプレックスを利用しての挑発攻撃を続けます。これらの、孔明さんの挑発に孫権さんは

  『東呉の主人は俺だ!兄上ではない!!』・『この俺が、東呉をここまで守ってきたんだ。孫仲謀が!』

     と、やすやすと乗せられてしまいました。挑発に乗せられて、軍議で家臣の意見を聞く前に、

     開戦すると勢いで言いきってしまったのです」

孫権 「孔明に利用されるほどに…俺が、かなり兄上に対してコンプレックスを持っていることがうかがえるな」

管理人「先ほど、『孫権さんより周瑜さんの意見の方が重んじられている。少なくとも孫権さんはそう思っている』

     という事情があると言いましたよね。この会見の時にも孫権さんは孔明さんに

     『東呉では、孫討虜将軍(孫権)ご自身よりも討逆どの(孫策)の右腕であった中護軍どの(周瑜)の

     言のほうが、重きをなしているという話も伺っております。中護軍の存在なしで、軍議を開戦に

     もっていくことなどできるものなのでしょうか』と言われています^^;」

孫権 「う〜む…それに対して、ざわ江の俺は

     『俺にその力がないとでもいうのか!!東呉を統べるのは俺だ!』

     と、反論しているな…。常にはない、甲高い叫びで、かなり感情的になっていると書かれているから、

     痛いところを突かれたのだろうな…」

管理人「張昭さんは孔明さんが

     『こちらの内々の事情に通じていて、孫策さんや周瑜さんの名を使ってあてこすっている』

     と言われています。「こちらの内々の事情」ということは、孫権さんがコンプレックスを持っていることは

     呉の家臣の方々にすでに知れ渡っているのでしょうね…」

孫権 「家臣はすでに知っているのか…。それで、ざわ江の俺は孔明に挑発されるまま、

     開戦すると断言したのに、張昭が『軍議で幕僚達の意見を聞いた上で決断するように』と言うと、

     すねたみたいな、どこか傷ついたような表情をして黙り込んでしまって、結局、結論は軍議で…と、

     開戦の決断を翻してしまった。そして

     『もし兄上が生きておいでだったら、今の状況にどう対処なされたと思う?』とか言うは

     『俺のように軍議一つを開くにしても、あれこれ言われたりするんじゃなくてさ。ここにいるのが

      兄上だったら、周りがなにを言おうが自分の意思で決断を下してただろうし、みなも、兄上が

      決めたことならすんなりと受け入れただろうから』と自嘲気味に笑ったりするは…重症だな…。

     国の存亡がかかっているのだから、家臣にあれこれ言われるのも当たり前だろ?それに耳を傾け、

     有用な意見は取り上げるべきだしな」

管理人「軍議では、家臣の方々のほとんどに降伏を勧められてしまいます。

     魯粛さんに、自身の意思を強く持って、議論に惑わされないようにと開戦を勧められても、孫権さんは

     『あの連中の主張を受け入れたいなんて思ってない。けれど皆が、俺では勝てないと思っている。

     俺には曹操を破ることなどできないと……だから降伏を望む』とまで言っています!開戦したいけど

     自分では勝てないと家臣の方々に思われているから降伏するって何なのですか?!

     自分が勝てる自信が無いというのならば、まだ分かります。でも家臣に信じられていないから

     降伏する何て…。人の目を気にして、人の自分への評価に従って物事を決めるのですね。

     自分がどうしたいのか、その意思は貫かないで」

孫権 「おまけに魯粛から、公瑾なら開戦に持っていけるから、公瑾をハ陽から呼び戻すことを勧められても、

     『自信が欲しい。皆に、公瑾に選ばれる器だという自信が』

     『兄上のような自信が。自分自身にみなを従わせる力があると、示したい』

     『公瑾に頼ったりしなくても大丈夫だと。俺が、決めて。けど…』

     などと言っている。情けなさと怒りを通り越して、哀れになってきた…。

     皆や公瑾に選ばれるという自信が欲しいって…あんなコンプレックスの塊で、公瑾を追い出して

     おきながら、選ばれたいも無いもんだな。そんな主君に人はついていかないと思うぞ!

     それに自信が欲しいなら、もう少ししっかりしろ!」

管理人「この本での孫権さんは、この時点ですでに8年も呉の主君をやっているはずですが、

     その間は家臣を従わせる自信も無く、皆に選ばれているという自信も無く、周瑜さんに頼らなければ

     駄目な人間だと、孫権さんは自分で自分をそんな風に思っていたのでしょうか。こんな調子じゃ

     誰もついてこないし、従わないと思うのですけれどね。いくら周瑜さんがいたって、こんな孫権さんに

     国が纏められるとは思えませんし」

孫権 「結局は公瑾を呼び戻して、軍議を再開したのだ。しかし、次々と降伏を勧める意見の前に、

     この本の俺は、公瑾の姿を目で追って

     『今にも唇が声を発しそうだ。助けてくれと、目が叫んでいた』という状態だとはな!

    自分自身に皆を従わせる力があると、示したかったのではなかったのか?!

    公瑾に頼ったりしなくても大丈夫だと示したい、俺が決めて…と言っていたではないか!

    それなのに、結局また公瑾を頼るのか!」

管理人「まあ、結局は周瑜さんが、勝てるという根拠を上げて開戦を主張したので、孫権さんは開戦を

     決断したのですけどね…。でも、その日の夜に周瑜さんと会った時には、孫権さんは自分のことを

   『総領という立場にいるくせに、皆の顔色ばかりをうかがって自分の意思一つ幕僚に告げることが

    できないでいる』、

   『孔明どのが俺のことをどう劉豫州(劉備)に伝えるか。とんでもない臆病者と同盟を結んだと、

    劉豫州は思うかもしれない』、

   『まじめな話、俺という人間は、東呉の主人として相応しくないんじゃないかと思うんだ。俺は

    自分でも嫌になるほど臆病だ。己自身が開戦を望み、そなたに背中を押してもらって

    あれだけ大見得を切ったくせに、今はまた、曹操に勝つなんて夢物語にすぎないなんて

    考えていたりする。開戦の決断を心の半分は後悔しているんだ。情けないとは感じる、けど、

     これが本音だ。俺は怖い』

     などと言われています…。もう聞いていられません!」

孫権 「情けなくて涙が出てくる…。自分で自分のことを一々臆病、臆病って…。

     呉の主君にふさわしくないって…。そこまで自分を卑下しないで欲しいもんだ。仕えている家臣にも

     失礼だぞ。こんな状態では、皆を従えていけないのも頷けるな。こんな俺より、公瑾の方が

     重んじられるとしても不思議は無いよな…」

管理人「周瑜さんは『臆病さをもち慎重であることは、人の上に立つ者として必要不可欠だと存じます』

     『ご自身の長所を卑下なさるのは、おやめになるべきだと思います』と言われています。でも、

     ざわ江の孫権さんは、臆病なだけで慎重なのではないと思いますけれどね…。それが長所だなんて

     絶対に言えないと思います」

孫権 「どうやらざわ江の俺は、家臣たちに、兄上が生きておいでだったら…と、何度も言われてきたみたいだ。

    それでコンプレックスを持ってしまったらしいから、そこは可哀想だとも思うが…」

管理人「最後に『公瑾。俺はお前の主人に見合うだろうか…』って、言われていますが、コンプレックス持って、

     自分より周瑜さんが重んじられるのを恐れて、ハ陽へ追い出したくせに、結局降伏派の前に自分で

     決断することができなくて、周瑜さんに助けを求めて…。それで主人に見合うかもないと思います」

孫権 「何だか、性格に関しては色々と批判するようなことになってしまって残念だ。だが、まだまだ主君としては

     若いのだし、これから成長もするだろうから…とにかく、頑張って欲しいものだな」

管理人「そうですね。それでは長くなりましたが、今回はこの辺で。次回をお楽しみに!」

 

 

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