『人間三国志 覇者の条件』(集英社)

管理人「この本では、正史に基づいた三君主の人柄や功績について取り上げられているのですが、

     もちろん孫権さんのことも取り上げられています」

孫権 「正史準拠なのだな。では、あまりこの本の内容で独自に取り上げられるものはないのではないか?」

管理人「いえいえ。孫権さんの人柄や人生から、孫権さんが覇者になれた条件を色々と解釈してあるところが

     とても面白くて、分かり易いのですよ」

孫権 「そうなのか?分かりやすく纏められているというのは、便利そうだな」

管理人「はい、例えば…まず孫権さんが覇者たりえた条件のうち、最大なものは『賢を挙げ、能を任(おも)んじ、

     おのおのその心を尽くさしめ』る見識と器量を持っていたことにあるだろう…と書かれています」

孫権 「『賢を挙げ…』の部分は、兄上が亡くなられる時に俺に言い残された

     『賢を挙げ、能を任んじ、おのおのその心を尽くさしめ、以って江東を保つは、我は卿にしかず』

     という言葉の一部だな」

管理人「さらに具体的に、『とりわけ彼は、彼とともに時代の空気を鋭く嗅ぎ取ることの出来る同世代の

     賢能の士を広く集め、彼らに絶対の信頼を寄せている。ともすれば冷や水を浴びせかねない

     宿老にくみすることなく、彼ら若き世代の、建て前にとらわれずにずばり現実の本質をついた

     意見を積極的に取り上げ、擁護した』としています。

     さらに『このことを言い換えれば、孫権が進取の覇気に富む人物であったことになるだろう。

     それが孫権を覇者にまで押し上げたのである』と続いています。その根拠として、孫権さんが

     魯粛さんを重用、信任した事例が上げられていますね」

孫権 「諸葛瑾を信頼した例も上げられているぞ。諸葛瑾が蜀への使者として出向くうちに、裏切って蜀と

     内通していると讒言するものが出てきたが、『子瑜が私を裏切らないのは、私が子瑜を裏切らない

     のと同じだ』と俺はその讒言を否定した…というエピソードのことだがな」

管理人「その孫権さんと諸葛瑾さんの信頼関係について、この本では『死生不易の交わり』を誓い合う

     間柄だと書かれていますね。死生不易の交わり…とても、格好よいですv」

孫権 「ははは、少しは俺のことを見直したか」

管理人「孫権さんと魯粛さん・諸葛瑾さんとの信頼関係の例をあげた後で『孫権と家臣の結びつきには、

     どことなく男だての世界に通じる義のモラルが生かされていた。用いたからには相手を疑わないで、

     最後まで信頼し通すところが孫権にはあり、彼の部下もまたその信頼にこたえて奮起し、結束した

     のである』

     『孫権が覇者たりえた最大の条件は、人間的条件だけに限るならば、やはりなんといっても

      孫権の個性ある有能な人間への信頼が生み出した、侠客的集団の「おのおの心を尽くさしめる」

      固い結束力にあったといえる』との解釈が述べられていますね」

孫権 「なるほど。俺の部下への信頼と、それが生み出した俺と部下との結束力が、俺が覇者になれた

     条件だとしているのだな。しかし、侠客的集団というのが何だか凄い言いまわしだな(汗)」

管理人「でもカッコイイですよ♪孫権さんの『用いたからには疑わない』部下への信頼は立派だと思います。

     その信頼が、家臣の方々の孫権さんへの信頼をも生み出し、心を尽くさせたのですものね♪」

孫権 「俺が呂蒙と蒋欽に学問を勧めた事も取り上げ、それも俺に進取の覇気があったからだとしているな」

管理人「はい、『孫権にこの進取の覇気があったからこそ、若い賢能の士の鋭い現実洞察力を信頼し、

     それを活用できたのである』と書かれていますね」

孫権 「進取の覇気か…どうだ、俺もなかなかのものだろう?」

管理人「まあ、孫権さんについて取り上げられているのですから、まず誉められているのは当たり前だと

     思いますけどね」

孫権 「俺が赤壁開戦を決断したことについても、『たとえ、周瑜と魯粛の抗戦論が堂々の布陣をみせても、

     孫権に意地と誇りがなかったならば、呉を挙げて曹操を迎え撃つ手はずはできなかったはずである』

    『孫権の覇者としての決断を助けたのは、周瑜であり魯粛であったが、なによりも孫権の英知と誇り

     が無ければこの少数派ともいえる抗戦論に呉を挙げて一丸となって結束させることは不可能で

    あったに違いない』云々と書かれてもいるな」

管理人「ちょっと誉め過ぎのような気がするんですけれどね^^; あと、時には魏と結んだリ、また他の時には

     蜀と結んだり…という、孫権さんの外交で生きぬいていく様を「サバイバル将軍」と表現されています」

孫権 「サバイバル将軍か。いかにも、乱世を生き抜く為に戦っているというイメージだな」

管理人「黄初二年(221)、魏の皇帝・曹丕さんが孫権さんに対して、呉王に封じた旨の勅令を届けた時、

     呉の武将の方々は拝命を拒否すべきだと反対したのですが、孫権さんは平然として、この呉王の

     位を受け取ったのですが、孫権さんの言い分は『昔、沛公(漢高祖)も亦た項羽に受けて拝して

     漢王となる。此れ蓋し時に宜(かな)うのみ。復た何をか損するや』ということでした。

     この孫権さんの態度に関しても『いかにもサバイバル将軍らしく、さばさばと割り切ったこだわりの

     ない態度である』と書かれています」

孫権 「呉は、山越の反乱という内部的な問題を抱えていたからな。国の内部への防御にも、いとまがなかった

     から魏に従属するような呉王の地位も、俺は甘んじて受けたのだ。この当時、呉が関羽を攻めて

     荊州を手に入れた時期で、そのことを恨む蜀からは勿論攻められるだろうし、山越にも反乱しない

     ように目を配っておかなければならぬし、この上、魏からも攻められれば呉は終りだろう?」

管理人「その辺りのことは、この本でも『硬と軟をたくみに使い分ける弾力外交を、孫権は得意としていた』

     書かれていますね」

孫権 「そうか。どうだ、少しは俺のことを見なおしたか?(上機嫌)」

管理人「ええ、まあ^^; ただ、確かに孫権さんには沢山の長所がありましたが、短所もあったのですよね…」

孫権 「(ギクッ)」

管理人「まず『前半期の孫権は、才能ある知賢の士を集め、彼らに信頼をおいて仕事をまかせ、彼らの才知が

     発揮できるように手を貸した。周瑜・魯粛・呂蒙・陸遜は孫権の信任に見事にこたえ、呉の覇業を

     達成した』と述べた上で、『孫権が皇帝の座についたあたりから、自分の臣下をあまり信頼しなく

     なった。それだけ自分を過信するようになり、傲慢になってきたといえるだろう』と、後年の孫権さんが

     乱れてきたことも、ちゃんと書かれているのですよ」

孫権 「やはりこの話も出てきたか…。俺の人生の後半は、評判が悪いからな…」

管理人「ご自分がやったことなんですから、しょうがないですよ^^; 孫権さんの失敗としては、遼東半島の公孫淵

     との同盟問題とか…。ほら、孫権さんだけが、呉に従いたいと申し出て来た公孫淵さんを信じて、反対

     を押し切って同盟の使者を送ったら、家臣の方々の見とおしていた通りに、公孫淵に裏切られた事件…」

孫権 「一々説明しなくていい…」

管理人「『孫権は皇帝になってからは、北方から江南にやって来た者に対してはもちろん、南方土着の文臣、

      武将に対してまでも猜疑心を抱くようになってしまった』と書かれています。事例としては

     たとえば、『辺境の地の防衛にあたっている将軍に、妻子を人質に出させ、もし敵に投降したり、

     逃亡を企てれば、直ちに人質を殺し、その罪を三族まで及ぼした』『校事と称する監察官制度を

     設け、戦場の監察から、文武百官の動静まで監視させた。校事は自分達の成績を上げるために、

     やたらと些細な過失まで糾弾するようになり、無実の者まで罪に落し惨殺した』とか…」

孫権 「うわぁ〜止めてくれ〜(汗)」

管理人「後は、呂壱信任問題や、後継ぎ問題や…長くなるのでここでは詳しいことは省きますが…」

孫権 「聞きたくない!」

管理人「耳ふさいだって駄目ですよ。全部自分でやったことじゃないですか。重い賦役に耐えかねて、

     民衆反乱も続々と起こったそうですね。呉の嘉禾三年(234)に盧陵の李桓と羅歴らが反乱を起こし、

     三年にわたって反抗を続けたり、嘉禾五年には、李桓の反乱に呼応するかのように、彭旦が兵乱を

     起こし、翌年には呉遽という人が農民を率いて大きな一揆を起こし…。それでも孫権さんは

     『孫権の暴政に耐えきれず、民衆反乱が続々蜂起している状況の中で、孫権は郡県の城郭を

      補修し、望楼を建て、塹壕を掘って、盗賊の反乱に備え、力によって鎮圧にかかるばかりで、

      いっこうに民衆の負担を軽減しようとはしなかった』と、書かれてあります。

     それに、『独裁的な君主のふるまいが目立ってきた』とか『孫権は長く生き過ぎた』とまでも書かれて

     いますよ!孫権さん、反省してくださいね」

孫権 「わっ、わかった…」

管理人「今回は、やけに素直ですね(笑) 」

孫権 「ちょっと耳の痛い話が多かったからな…」

管理人「でも、評価されているところはしっかりと評価されていますし、皇帝就任後の孫権さんの失政も取り上げ、

     それ以前の孫権さんの良い面も沢山取り上げられていますから、バランスは取れていると思います。

     孫権さんについて、纏めて詳しく書かれていましたので、この本はとても勉強になりましたよ(^^)」

孫権 「だいぶ手痛い意見も多かったけれどな。それでは、俺が落ちこんだところで、今回はここまでだ!」

管理人「それでは次回を、お楽しみに!」

 

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