『公子風狂 三国志外伝 曹操をめぐる六つの短編』(講談社 著者:藤水名子)

管理人「今回は、曹操さんに関する六つの短編が収録された『公子風狂』という小説に出てくる孫権さんを

     取り上げます」

孫権 「曹操に関する短編小説ならば、魏の者たちがメインに書かれるはずだろ。俺の出番は無さそうだが?」

管理人「それが、意外にも孫権さんの出番があるんです!六つの短編のうち、一番最後に収録されている

     『曹操の死』という作品に、孫権さんが出てきていますよ」

孫権 「『曹操の死』という話は、曹操が洛陽で、病に倒れたところから話が始まるようだな」

管理人「そうですね。そして曹操さんが倒れられたという報告は、もちろん孫権さんの耳にも入っているようです。

      孫権さんは、その…はっきり言ってしまえば、曹操さんが亡くなったという報告を待っていらっしゃる

      みたいで『洛陽からの報らせはまだか?』と、陸遜さんに尋ねられています。そう尋ねている孫権

      さんは『碧眼児・孫権の澄んだ昊空(あおぞら)の色を思わせる瞳が、野心を湛えて爛々と輝く』

      いう様子だったと書かれていますよ」

孫権 「澄んだ昊空の色を思わせる瞳…か。綺麗な表現で、俺の目のことが説明されているな♪」

管理人「孫権さんはどの作品でも、殆ど碧眼に描かれていますが、同じ青い目でも色が濃いとか薄いとかで

     色々と印象が変わってきそうですよね。この作品の孫権さんの目は、澄んだ青空の色をしていることが

     上記の文章から分かります。澄んだ…というところから、透き通った明るめの水色をしている目を

     連想しましたよ♪」

孫権 「その目を爛々と輝かせているとは、いかにも野心満々といった雰囲気だな」

管理人「でも孫権さんは、待ち望んでいるような報告を、なかなか得られていないみたいです。陸遜さんも、

     孫権さんの問いには『はい、未だ』と、小さく首を振り、気の毒そうに顔をしかめて、答えられていますし」

孫権 「伯言(陸遜)も出てくるのか。そういえば伯言は丁度この頃から、表舞台で活躍し始めるんだったな」

管理人「そうですね、孫権さんが伯言さんを重く用いられるようになるのは、丁度この場面で書かれている

     時期の前後くらいからですよね。この作品でも、孫権さんが周瑜さん、魯粛さん、それに呂蒙さんと

     有能な家臣の方々を次々と亡くされていることに触れ、『孫権より一つ年下の陸遜は、昨年呂蒙が

     病没する直前、自ら孫権に推挙した者である』と、陸遜さんについて説明されています」

孫権 「ちゃんと、俺より一つ年下だと、伯言の年齢について説明されているところが良いな!

     年が離れているように思われがちな俺と伯言だが、実は一歳違いなんだよな。それなのに、俺は

     老けたイメージで描かれることが多くて、伯言はいつも若く美形に描かれることが多いようだ…

     少し納得がいかないぞ!」

管理人「はいはい、愚痴は後でたっぷり聴きますから、ちょっとここでは静かにしていて下さいね。

     それに、確かに孫権さんは老けたイメージで描かれることが多いかもしれませんけど、それは孫権さん

     が一国の君主だからじゃないですか?君主と聞くと、やはり貫禄があって堂々としているという

     イメージが強そうですものね♪」

孫権 「貫禄があって堂々としている…そうか、そのように見られているというのならば、悪い気はしないな」

管理人「そうですとも♪…良かった、単純におだてに乗ってくれて♪」

孫権 「何か言ったか?」

管理人「いえいえ、何でもありません^^; ええと、陸遜さんについては、さらに詳しく『呂蒙の穴を埋めるのに充分な

     能力があり、しかも齢が近いためか、孫権の考えと意見を一つにするところが多かった』との説明が

     されていますね」

孫権 「そうだぞ、伯言は俺と年齢が近いというか、一歳年下なだけなんだから…そのことを忘れないで欲しい

     ものだな」

管理人「はいはい。そんなにしつこく主張しなくても、ちゃんと分かりましたから」

孫権 「だがこの本では、俺が伯言を重く用いることを、張公(張昭)は快く思っていないみたいなんだよな」

管理人「そのようですね。孫策さんが亡くなられた後、若くして孫家を継いだ孫権さんには、『父や兄の代からの

     家臣が多く、その殆どが口やかましい老臣たちである』との説明がまず、されていて…」

孫権 「『口やかましい老臣たち』とは、随分な書かれ方かもな(笑)そんな悪い者たちではないぞ?」

管理人「そうですよね^^; それで、さらにその後『中でも、長老格である張昭などは、孫権が、事あるごとに

     陸遜を重用することを露骨に嫌う』と、文章が続けられています」

孫権 「この本の張公は、どうしてそんなに陸遜の重用に反対しているんだ?」

管理人「それは張昭さんが、孫権さんを諌めている言葉から分かります。張昭さん曰く…

     『いかに名門の出とは申せ、新参者ばかりを優遇いたしましては、これまで長くあなた様に仕えており

      ました者たちが、皆、不平を申しましょう』との理由から、反対されているみたいですね」

孫権 「う〜ん、張公のこの諫言は、少しひっかかるな…。伯言を優遇したからといって、長く仕えている家臣

     をないがしろにしていることには、必ずしもならないはずだろ?それに伯言のことを新参者と

     言っているが、実際には伯言は二十一歳の時…俺が呉を継いで三年ほど経った時期に、呉に出仕して

     俺に仕えているから、この場面の時にはすでに、十六〜十七年は呉に仕えていることになるはずだ。

     新参者とは、言えないよな(笑)」

管理人「確かにそうですよね。陸遜さんは、表立って活躍するようになるまでにも、山越を平定したり、民治を

     務められたりなどの功績も挙げておられますしね」

孫権 「『十八歳で家督を継いだ孫権の、師傅(しふ)か父親にでもなったつもりで、常に彼を教え導いてきた

     張昭は、いまでもあの当時と同じ調子で、孫権に意見する。孫権としては甚だ面白くない』と書かれて

     いるから、この本の俺も、張公の意見を快く思わなかったようだな」

管理人「この場面の頃には、孫権さんはもう二十年近くも、呉の主君を務めていることになりますから。

     経験も積んでいらっしゃるはずですし、いつまでも後を継いだばかりの頃のように、うるさく言われたく

     ない…というお気持ちがあったのでしょうね。でも、張昭さんが父親にでもなったつもりで孫権さんを

     教え導いてきたというところが、私的に気に入ってしまいました!父親のような気持ちで、孫権さんに

     接し、教え導いていこうとする張昭さん…こういう設定は、個人的にツボです〜vv」

孫権 「何だよ、設定って…お前の個人的な好みを、ここで言われてもなぁ」

管理人「でも、孫権さんが張昭さんの意見を快く思われないのには、また別の理由もあるみたいですよ。

     『孫家一代の命運をかけた赤壁の戦の前後から、孫権は張昭を、少々もてあましはじめていた』

     とあります。赤壁の戦いの時、張昭さんが降伏を主張したのとは裏腹に、孫権さんは開戦し、

     そして周瑜さん、黄蓋さんの活躍で呉軍が曹操軍に勝利しましたよね。結果的に、張昭さんの主張する

     降伏論は間違っていたということになり…『孫権とて、人の上にたつ人間として、後日そのことで、張昭

     の顔をつぶすような真似はしなかったが、それまで彼に抱いていた一方的な信頼は、それを境に、軽い

     嫌悪へと変わっていた』…と書かれています。孫権さんの張昭さんへの信頼が大きく崩れたと

     いうのも、孫権さんが張昭さんの意見を快く思わなかった理由の一つみたいですね」

孫権 「だから、この本の俺は張昭に、『曹操の死の直後、素早く兵を挙げ、混乱しているであろう魏の隙をついて

     事を起こす』という計画を、あえて明かしていないんだ」

管理人「孫権さんは、その計画を実行するために、曹操さんが亡くなられるのを待っていらっしゃったので

     すね。…いくら曹操さんが強敵で、乱世の世の中だからといっても、人の死を待ち望むというのは、

     どうかと思いますけれど…(ーー;)」

孫権 「だが、報告はなかなか来ない。曹操が倒れたと聞いてから、もう半月にもなるのにと、この本の俺は

     伯言に対して話している。それに、『曹操は確か、今年で六十五……いや、六十六だったな?』との、俺の

     言葉に、伯言は『魏王(曹操のこと)はとりわけ、壮健な方と聞いております』と答えているしな」

管理人「曹操さんがとりわけ壮健だということに対して、孫権さんが言われる言葉が凄いです…。

     孫権さんは陸遜さんに対して『それにしても、六十六だぞ。……いい加減、くたばればよいのに

     と言われています!乱世ですから、敵の不幸を願うということは当たり前なのかもしれませんけれど…」

孫権 「確かに人としての道に外れるかもしれないがな。だが伯言も、俺の言葉に対して、俺が両頬を

     紅潮させてゆくのとは好対照に、淡々と『御意。あまり長く病まれては、些か厄介でございます』

     応じ、さらに『魏王が長く病めば、曹丕はそれだけ、魏王が死んだあとの準備を、完璧に為すこと

     でしょう。それこそ、我らを迎え撃つための万全の備えを整えまする』とも、述べているぞ。

     俺達には、乱世に生きる者としての事情があるのだ」

管理人「…伯言さんの言葉に、孫権さんも『そのとおりだ。青二才の曹丕など少しも恐ろしくはないが、奴の率いる

     軍勢は、あの、曹操の軍だ。……楽には勝たせてもらえぬぞ』と応えられていますね。事情は分かります

     が、曹丕さんのことは少しも恐ろしくないとは…曹丕さん、見くびられているのですね^^;」

権 「伯言の、曹操が倒れたという報告さえも、我々をおびき出すための策略かもしれない…という言葉を

     聞き、この本の俺は無念そうに爪を噛む…と書かれているな。なかなか計画を実行に移せぬことに

     苛立っているようだ」

管理人「その計画がどんなものなのかも、詳しく書かれていますよ。それによると孫権さん達は、曹操さんが

     病んでいらっしゃる洛陽の魏王宮に、すでに何人もの間者を送り込んでいて、曹操さんが亡くなられ

     た時には、その間者のうちの誰か一人でも良いから、素早く呉に立ち戻りその旨を孫権さんに報告する…」

孫権 「そして報告を受けた俺達は、素早く兵を挙げる…そのために、戦闘を繰り返して来た国境線

     の濡須に、すでに兵を集めてあり、そこから一挙に都に攻めのぼり、ないがしろにされている漢の

     献帝を奪う。…これが、計画の全貌らしいな」

管理人「天子さえ手に入れれば、正義は呉のものになる。そうすれば漢室びいきの保守派の張昭さんも、

     文句を言わないだろう…との計算があって、立てられた計画だと書かれていますね。さらに孫権さんの

     性質についても、『小覇王と呼ばれた気性の激しい兄とは、あまり似ていないと言われた孫権だが、

     ともすれば、一度ですべてが激変するような大きな賭けを冒したくなる性質は、しっかり兄から受け継い

     でいるらしい』と述べられています♪大きな勝負に出たがる孫権さん…格好良い書かれ方ですねv」

孫権 「『相手の喪につけこんで兵を起こすのは確かに邪道だが、乱世にあっては許される』と、計画に関しての

     言及がされているな。そして、乱世においては喪につけこんで事を起こすことさえ許されるというのは

     張公が、兄上を亡くして泣き崩れている俺に対して『今は乱世。服喪中だからと言って、敵が遠慮して

     くれるなど有り得ぬことですぞ。礼を尽くさなかったからと言って、非難する者はどこにもおりませぬ』

     と言った言葉にも証明されていると書かれている。そう言った時の張昭の『血のかよわぬ塑像の

     ような顔つき』を、この本の俺は今でも忘れられない…とも述べられているぞ」

管理人「血のかよわぬ、塑像のような顔つき…随分と、張昭さんが冷たい人間のように感じられる書かれ方

     ですね…。張昭さんが言われている事は確かに厳しいことですが、正論だと思うのですけれどね〜」

孫権 「張公が冷たいというか、乱世は非情なものなのだということを表しているようにも読めるけどな」

管理人「なかなか計画が実行に移せないことに、業を煮やした孫権さんは、陸遜さんに向かって

     『なんのための間者だ。……万が一永らえるようなら、一服盛らせればよい』と、曹操さんの暗殺までも

     指示するようなことを言われています。『では……どうしても?』と尋ねる陸遜さんに対し『やる』

     小さく頷く孫権さん…『その表情には、さほど翳りは見られなかった』と書かれています」

孫権 「ううむ、随分と強気な俺だな」

管理人「そんな孫権さんの様子に、陸遜さんも暫し言葉を呑まれています…陸遜さんは『まだまだ夭(わか)い

     と思えた主君の中に、別人のような姦雄の顔を見出したのである』とあります」

孫権 「姦雄…確かに、この場面での俺は、野心に爛々と目を輝かせたり、さっさと曹操がくたばれば良いと

     言ったり、曹操暗殺を企んだり…と、姦雄といえるような行動が多いよな」

管理人「でも、姦雄のような一面を孫権さんが持っているといっても、それで孫権さんに対するイメージが

     悪くはならないように私には思えました。むしろ、覇権を狙う群雄の一人として、大きく成長したような

     印象を受けて、格好良いと思いましたよ(^^」

孫権 「まあ、受け取り方は人それぞれだからな。…ところで先ほど、俺の愚痴は後でたっぷりと聞くと言って

     いたよな?もう場面の紹介は終ったのだから、愚痴って良いだろ?」

管理人「えっ?いえ、それは…あの、その…余計なこと、言わなきゃ良かった…(泣)」

孫権 「やはり、一つしか年が離れていないのに、伯言には一般的に若いイメージがあって、俺には一般的に

     老けた…とまではいかなくとも、おっさんなイメージが付きまとうというのは、何だか納得いかないんだよな」

管理人「若く描かれれば、それで良いというものではありませんよ?」

孫権 「それはそうなんだが…。たまには俺だって、若々しく描いて欲しいぞ!伯言を若くするなら、俺も若くしろ!

     何度も言うようだが…」

管理人「俺と伯言は、一歳しか年が離れていないんだから…ですか?お気持ちは分かりますけれど、そんな

     我侭言わないで下さい…」

孫権 「それなら逆に、俺を老けさせるのに合わせて、伯言も老けさせるというのはどうだ?」

管理人「それは陸遜さん好きな私としては、個人的に大反対です!でも陸遜さんに合わせて、孫権さんを

     若くするのには、大賛成ですけれどね(笑)それでは、孫権さんの愚痴も一段落ついたことですし、

     今回はこの辺で終りにします。次回を、お楽しみに♪」

孫権 「待て、俺はまだ愚痴りたいことが沢山あるぞ!…まだまだ愚痴るから、覚悟しろよ(笑)」

管理人「ええ〜?まだ、孫権さんの愚痴は続くのですか…(T_T)」

  

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