「水遊」


―――――建業城、郊外
孫権は丁霧季と、護衛兵10人を連れて小さな湖へと来ていた
「若殿、釣りをなさると聞いていましたが・・・」
護衛兵の一人が孫権に話しかける
「あぁ、そうだが?」
しかし、孫権の手には網がしっかりと握られていた
「では・・・その網は?」
「魚を捕らえるための物だ」
「若殿、釣りとは釣り竿を使ってするものですよ」
丁霧季が後ろで腹を抱えて笑っている
「いいんだよ、これでいっぺんに捕れば12匹ぐらい簡単だろう」
「なるほど、全員分を捕るおつもりですか若殿」
孫権は少し怪訝そうな表情を浮かべた
「丁、若殿はやめてくれないか?それは兵たちが呼んでる呼び方であって・・・」
「仲謀殿と呼べと?」
丁霧季が孫権より先に言う
孫権は良く解ってるじゃないかと言って再び歩き出した

歩きつづける事半刻ほど
一行は湖についた
「さて・・・と」
孫権は湖に突き出している岩場に飛び移ると、早速網を投げた
「あの網は一体何処で手に入れたのでしょうね?」
護衛兵と丁霧季はそんな話をしていた
「きっと幼平殿でしょうな・・・何やら騒いでいましたから・・・」
「幼平殿も大変だ・・・」
他愛も無い話を続けていると孫権は魚を1匹捕まえた
「何やら叫んでますが・・・あ!」
孫権は岩から見事に湖へと落下した
護衛兵達は急いで現場へと向かった
丁霧季もその後を追った
「若殿!」
水面から孫権が飛び出してきた
「ぷはぁ・・・全く・・・ひどい目にあったぞ」
ザブザブと泳ぎ岸へと上がってきた
「はしゃぐからですよ」
「魚にも逃げられてしまったではないか・・・はっくしょん!」
「風邪をひいては大変です、誰か、薪を持ってきておくれ」
丁霧季の指示で護衛兵が近くの森へと走って行った
「あぁ・・・夏だと言うのに水温は低いな・・・」
「暦の上では夏ですがまだ初夏です、水温は冷たいですよ」
「うぅ・・・本当に風邪をひいてしまいそうだ・・・」
丁霧季は付けていたマントを取ると、孫権にまきつけた
「これぐらいしか出来ませんが、少しは違うでしょう?」
「あぁ・・・風が通らなくなった・・・すまない、丁」
護衛兵達が薪を持ってくると、急いで火をつけた
孫権は火の傍に座らされると動いてはいけないと丁霧季に言われた
「これでは釣りどころか水遊びになってしまったではないか・・・」
「幼平殿が居たら大騒ぎでしょうね」
丁霧季がクスクスと笑う
「幼平は心配し過ぎなのだ、これぐらいで騒いでいてはいざと言う時凄まじく五月蝿いぞ・・・」
「まぁまぁ・・・それだけ仲謀殿が大切だと言う事ですよ」
「公瑾も兄上もいいよな・・・」
突然、孫権が話題を変えた
「何故です?」
「公瑾には綺麗な玲可と言う嫁が居るであろう?兄上には・・・名は忘れたが
 綺麗な町の娘を嫁としている」
「仲謀殿ももう17ですか・・・」
孫権は大きな溜息をついた
「しかし・・・俺は綺麗より活発な方が良いのだがな・・・」
「活発ですか?」
「あぁ、それと自分の考えが確りしている奴かな」
孫権が嬉しそうに話す
「あ、この事は内緒だぞ・・・兄上が知ったら大笑いされてしまう・・・」
「解りました、他の人には何も言いませんよ」
其処に、護衛兵達が1mほどの大魚を担いでやってきた
「若殿!こんな大きいのが捕れました!」
「よし、じゃあ城に帰ろうか」
孫権は大分乾いた服をパンパンと叩くと、城へと戻った


丁霧季は魏領の徐州で兵が軍事訓練を始めた事を孫堅に伝えに向かっていた
いくら三国同盟が成立しているとはいえ、いつ戦争になるかわからない
孫堅の元に向かう途中、周瑜と玲可に出会った
「おや、丁将軍・・・」
「これは公瑾殿に玲殿」
「いかが致したのかな?そんなに急いで」
丁霧季は周瑜に事情を説明した
「それは烏丸を討伐する軍ですよ、キ州で行うと烏丸の攻撃を受けるとかで・・・」
「そうだったのですか、私はてっきり呉に攻め込んでくるかと・・・」
「あの曹操殿の事、自分から言い出した盟は守るでしょう」
「そうだ、丁将軍」
「何でしょう?玲殿」
玲可は懐から手紙を取り出した
「仲謀殿からの御手紙です、先程渡してくれと頼まれましたので・・・」
丁霧季は手紙を懐にしまうと、二人に別れを告げ、その場から立ち去った
「何事でしょう・・・仲謀殿が手紙とは・・・」

手紙の封を開けると、中には[今度、水遊びに行こう、幼平は忙しいらしいからな]
とだけ書いてあった
「フフ・・・仲謀殿らしい」
笑いながら廊下の角を曲がると、孫権とばったり出会った
「仲謀殿」
「あ、丁・・・手紙読んだか?・・・って手に持ってるな・・・」
「はい、何時でも宜しいですよ・・・私も仕事がない限りお供させてもらいます」
「そうか、それじゃあな」
孫権はその場から立ち去った
「全く・・・ご自分は仕事がないのですか?」
丁霧季は孫権に聞こえないような声で呟いた



それから1週間後
丁霧季はちょうど出仕するため部屋から出たところで孫権とあった
「丁、約束していた通り、今日行こう!」
「すいません、まだ出仕してないので・・・仕事がないのを確認したら行きましょう」
「そうだよな、丁も忙しいよな」
孫権がシュンとする
「まだあったと決まったわけではないでしょう?」
丁霧季が子供をあやすように言う
「そうか、じゃあ俺は家に居るから・・・仕事が終わったら来てくれ」
孫権は庭に繋いでおいた馬に乗ると、丁霧季の家から出て行った
「さて・・・急ぎますか・・・」
丁霧季は軍部へと向かった
しかし、仕事がないのを確認すると、孫権の家へと向かった
「仲謀殿・・・」
家の入り口で孫権を呼ぶと、部屋から孫権が出てきた
「ん?早かったな」
「今日は仕事がありませんでした」
「そうか・・・じゃあ行くか」
孫権は何やら大きな布に包まった棒らしき物をもって湖へと向かった


湖につくと、孫権は手に持っていた布を開けた
そこには、木で出来た剣が二本包まっていた
「仲謀殿・・・水遊びでは?」
「あぁ・・・その前に俺と勝負してくれ」
丁霧季は木刀を受け取った
「珍しいですね、仲謀殿から勝負を挑んでくるなんて・・・」
「さて、御喋りはここまでだ、行くぞ!」
孫権の鋭い太刀が丁霧季に向かってくる
それを上手く弾き返し反撃をする
しかし、孫権はその攻撃を見事に防ぐ
そんな攻防が長く続いた・・・

どちらも退かず、ついには日が沈み始めていた
「仲謀殿・・・ハァハァ・・・今日はこのへんで・・・」
「ハァハァ・・・だな・・・つ・・・疲れた・・・」
孫権が地面に腰を着く
「汗が・・・」
丁霧季が袖で汗を拭う
「すいません、仲謀殿・・・水を浴びてきます・・・」
「わかった、俺はココでまってる」
「すぐ終わらせますから」
茂みで見えないところに行くと、丁霧季は身に着けていた物を全て脱ぎ、湖へと入った
髪も水でぬらし、軽く泳ぎ始めた
「はぁ・・・仲謀殿も強くなったのね・・・」
先程の組合を思い出す
全力で向かって行ったのに、昔のように一発も打ちこめなかった
そんな事を考えながら岸へと向かった
「キャッ!!」
「どうした!丁!!」
孫権は丁霧季の悲鳴を聞いて駆けつけてきた
「あ・・・」
「仲謀・・・殿・・・」
丁霧季は岸から丁度上がったところで、何も身に着けていなかった
急いで丁霧季は服を身に着けた
「仲謀殿・・・そんなジロジロ見ないで下さいよ」
丁霧季が髪を結びながら言う
「すまない・・・見るつもりはなかったんだ・・しかし、何故悲鳴を?」
「え?あぁ・・・丁度野犬が・・・」
「野犬?」
「岸に上がった時に突然目の前に居たものですから・・・」
孫権はゅっくりと丁霧季に近寄った
「仲謀ど・・・」
突然孫権にキスをされた丁霧季は驚いて孫権を突き飛ばしてしまった
「す・・・すみません」
丁霧季はうつむいたまま呟いた
「いや、こっちもいきなり・・・するような物じゃないよな・・・」
孫権が立ちあがりながら続けた
「丁の裸を見た時・・・何か・・・惹かれたんだ」
「え?」
「何時もとは違う丁をみたと言うか・・・俺の想像してた人物に・・・にてたから」
孫権は恥ずかしそうな表情を浮かべた
「だから・・なんて言うか・・・・丁のことが好きだ」
孫権は鎧さえも身に着けていない丁霧季を抱きしめた
「し・・・しかし、私達は君臣の間柄・・・そんな事は・・・」
突然の事で丁霧季は混乱していた
「俺は・・・お前じゃないと・・・だめな気がする」
「そんな事言うと・・・一生傍を離れませんよ?」
「あぁ・・俺も丁を一生離さない」
丁霧季はそっと孫権の胸に手を当てた
「それなら・・・喜んで・・・」
孫権は丁霧季を優しく抱いた
「帰ろうか」
「ハイ」
丁霧季はニッコリと笑うと、鎧を拾い上げた
「兄上はきっと驚くだろうな・・・」
孫権は照れながら馬に乗った
「そうですね・・・」
「ふっ・・・これからは丁の事をなんて呼ぼうか・・・」
「何時も通りで宜しいですよ」
クスクスと笑いながら丁霧季は馬に乗った
「そうだな・・・さ、行こうか・・・愛しい人よ」
「えぇ」
孫権の後を丁霧季は続いた
この後、周泰が大騒ぎしたのは言うまでもない・・・


↑百蓮さんに頂いた、丁 霧季と孫権の小説です!
 百蓮さんのサイトでは、申し込まれますと自分の分身キャラと好きな三国志の人物との
 小説を書いて頂けるという企画を行われておりまして。私も企画に参加させて頂き、
 この小説を頂いたのです♪ですから、丁 霧季は私・TMKの分身なのですが…きっと私とは
 似ても似つかないような、可愛い女の子なのでしょう(^^;)私の裸を見ても孫権さんは…(以下自粛)

 もう,読んでいる間中、嬉しくって嬉しくって狂喜乱舞しております(爆)
 孫権様が何と言っても可愛いですvv
 一緒に水遊び…というデートの約束や、いきなりのキス…もうもう最高です!
 愛しい人よ…ああ、実際に言われてみたい台詞です〜♪
 大好きな孫権さんとのラブラブ(死語?)を実現して頂いて幸せです〜!!

 とっても素敵なお話をありがとうございました!!

                 (戻る)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送